フジテレビの看板番組『ホンマでっか!?TV』を支えてきた総合演出・玉野鼓太郎氏の電撃退社。このニュースは、単なる一社員の去就ではない。30代という脂の乗り切った「現場のエース」が、自らテレビ局という巨大な看板を捨てた。これは、地上波メディアがいよいよ「才能の墓場」と化し、真のクリエイティブがデジタルプラットフォームへと完全に流出していることを象徴している。
玉野氏は、明石家さんまという「お笑い怪獣」の呼吸を読み、若くして数々の企画を通してきた天才肌だ。その彼が、独立して「大手配信メディア」と組む道を選んだ。なぜか。答えは明白だ。今の地上波には、もはや彼のような尖った企画力を受け止めるだけの余裕も、予算も、自由もないからだ。
かつて、テレビ東京からNetflix、YouTubeへと戦場を移した佐久間宣行氏や、ABEMAを経て『ReHacQ』で既存メディアを圧倒する高橋弘樹氏。彼らは証明した。もはや「質の高いコンテンツ」を作るのに、古臭い電波利権や硬直した局内組織は不要であると。それどころか、コンプライアンスという名の自己検閲に怯え、スポンサーの顔色を伺い続ける地上波は、クリエイターにとって「表現の翼をもぎ取る檻」でしかない。
NetflixやAbemaといったデジタルプラットフォームは、クリエイターに「自由」と「世界市場」を提示する。一方で地上波は、世帯視聴率という過去の遺物に執着し、誰にも刺さらない「無難な最大公約数」を量産し続けている。三浦淳氏(24年退社)に続き、玉野氏のような次世代の旗手まで失ったフジテレビ、ひいては地上波各局に、一体何が残るというのか。
「地上波はオワコン」――。その言葉が単なる煽りではなく、冷酷な現実であることを今回の退職劇は突きつけている。最高峰の企画力を持つ人間から順に、テレビという沈みゆく泥舟を降りている。私たちが本当に面白いコンテンツを見たいなら、もはやリモコンを置くしかない。真のエンターテインメントは今、スマートフォンの向こう側にあるデジタルという新世界で、かつてのテレビ戦士たちの手によって産声を上げているのだ。



